望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「君は、結界を張ることもできるのか」
 それに答えることはせず、カレンは笑顔を浮かべた。

「ですが、私の力は制限されているのです。そのために、ここへ来たというのもありますが」
 どういう意味だ、とレイモンドは眉根を寄せた。魔導師ではないレイモンドから見たら、カレンの力には驚かされることばかりだ。それでも制限されている、というのだろうか。

 目の前にあるのはただの小屋。今住んでいるような立派な屋敷でもない。カレンがその入り口に手をかけると、その小屋はキラリと光って何かを取り戻したように息をし始めた。廃屋ではなく、長年誰かが住んでいたかのように。だから、カチャリと音を立てて中に入ると埃も無くカビ臭いわけでもなく、すぐにでも休めるような状態だった。だが、物が片付けられているとは言い難い。

「問題なくここにいることはできると思いますが、少し、片付けますね。荷物はその辺に置いてください」
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