望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「カレン様。危ないので、下がってください」

「危ないって何?」

 聞いても答えが返ってこないことはわかっている。それにあの隊長という男が、右手に細身の剣を手にしていることもわかる。その剣が赤いような黒いような色の液体で染まっていることも。

「ケネス。なぜ彼女を連れてきた」
 男の声は低くそして非常だった。

「王妃様の命令です」

「また、あの女か」
 言い捨てると、その男はゆっくりとカレンに近づいてきた。その血で汚れた手でカレンの顎に触れる。

「いい目だ。俺の名前はブレイグ。お前の母親を殺したのは俺だ。恨むなら俺を恨め」

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