望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「ちち? お父さんってこと? お父さんは生きてるの?」

「ああ、レイア様は何も伝えていなかったんだな」
 ブレイグは哀惜のため息とともに、その言葉を吐き出した。その目は、どこを見ているのか。それでも彼はカレンに対してすっと片膝をつき、右手を左胸に当て、忠誠の姿勢をとる。

「ダレンバーナ第四王女カレン様。この近衛騎士隊ブレイグが命に代えてもあなた様をお守りいたします。あなた様が死ねと私に命じるのならば、私は喜んでこの命を差し出します」

「え、第四王女ってどういうこと?」

「あなた様の御父上は、このダレンバーナ王でございます」
 恭しく頭を垂れたままのブレイグ。カレンはいまだにケネスに拘束されたまま。だが、それでよかったのかもしれない。ブレイグのその言葉を耳にした時、後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受けた。けして、ケネスが殴ったわけではない。ただ、それくらいの衝撃が、そのブレイグの言葉にあったのだ。

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