望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「え」
 驚き、カレンはレイモンドのその目を見る。彼はその目を細めた。
「だが、すでに君はここにいなかった」
 きっと、あの王宮に連れていかれた後だ。それよりも、レイモンドがこちらへ来たということは、少しだけ気になることがある。

「あの、旦那様。この家には入られましたか?」
 カレンがまた旦那様と言ったところで、少し苦笑を浮かべたレイモンドではあるが、「ああ」とだけ返事をした。

 この家には母親の魔法がかけてあったはず。だから、おいそれと家に入ることはできないはずなのだが。
 つまり、母親は彼を認めたということなのだろうか。それとも、こうなるということをわかっていたのだろうか。

 いや、きっと、母親にはわかっていたのかもしれない。
 彼もまたカレンの運命の番であった、ということを――。
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