望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 ゆっくりと魔導書を読むことができる、とカレンはそう思っていた。

 あのとき、カレンの髪の色が元に戻ったとき。やはり彼女の魔法は解放されたらしい。それからすぐに禁書の置いてあった本棚は寝室に姿を現した。本当に母親の魔法は不思議なものだ。
 魔法の解放のために禁書を探していたのに、禁書のために魔法解放が必要だったとは。その解放の条件がなんだったのかは、カレンは未だ知らない。
 それを調べるためにも、そしてあの戦争でなぜダレンバーナが勝利を収め、ローゼンフェルドが敗北しなければならなかったのかということを調べるためにも、禁書は必要だった。

 禁書。それはまさしく禁書であった。母親の手書きの書物。禁書だと思っていた他の魔導書は、ただの上級魔導書であった。記憶というものに頼るのは、たまには悪い時もある、ということか。
 ただ、この上級魔導書もこの家から出すのは危険であると感じた。上級魔導書も、そして母親が残した禁書も、ここに隠しておく必要がある、と。だから、カレンは一人、この魔導書を読むために、ここへ残ることを決めたのだ。
 レイモンドも残りたそうであったが、彼がいると魔導書の解読に専念できなくなるのが目に見えている。だから、休みが明けるというのは、ちょうどいい口実になった。

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