望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
4.交渉
 次の日。
 カレンが目を覚ますと、この屋敷内にすでにレイモンドの姿は無かった。すでに仕事へと向かったらしい。戦争放棄した今でも、騎士団の仕事は忙しいらしい。
 朝食を終え、部屋へ戻るとメアリーがニコニコと満面の笑みを浮かべているのは、きっとそういうことなのだろう。だから、笑い返しておく。
 昨日の今日ということもあり、メアリーからは本日はゆっくりお休みください、とか言われてしまう。だが、カレンは特に休む理由が見つからない。つまり、暇だ、ということ。
 カレンはそのまま書庫へと足を向けた。

「義姉さん。少し、お時間よろしいでしょうか」

 書庫で本を読んでいたカレンを呼びに来たのはアドニスだった。

「ええ、何かしら?」

「ここではなく、お茶でも飲みながらいかがですか」
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