望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う

「形だけ？」
　アドニスは目をくりっと大きくして聞き返す。こういうところは年相応と思えてしまう。
　カップに口をつけたまま、カレンは頷いた。ゆっくりとカップをテーブルの上に戻す。その間に何かを考えるかのように。
「この一年で、新しく雇った使用人はいますか？」
　一字一句、はっきり伝えるかのように言う。

「え、新しい使用人ですか？　多分、料理人が一番新しかったと思います」

「それはダレンバーナの人間である可能性が高いですね。どのようにして採用されましたか？」
　新しい使用人は、危険。カレンはずっとそう思っている。いくらここがローゼンフェルドであったとしても。

「ええと、王宮関係者からの紹介です」

「だからです。ローゼンフェルドの王宮は形だけ。すでにダレンバーナの手に落ちていますから」