望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 そう、ここはローゼンフェルドであってすでにローゼンフェルドではない。

「ですが。兄は、あのように王宮へ通っています」

「そうですね。ですから、それが不思議で仕方ありません。いや、要人の警護も騎士団の仕事ですから、そちらの方で忙しいのかもしれませんね。形だけでもローゼンフェルドの王族の人間は護らなければなりませんから」

 カレンは腕を組んだ。表向きは和解となっているが、ダレンバーナがローゼンフェルドを支配している形になっているのは事実だ。騎士団の中にもダレンバーナの人間が紛れ込んでいてもおかしくない、というのに。レイモンドの立ち位置がよくわからない。

「とにかく、その新しい使用人には気を付けてください」
 カレンは腕を組んだまま言った。

「はい。ですが、むしろ義姉さんのほうが気を付けるべきでは?」
 アドニスのその言葉に、カレンは頷く。
「ええ、彼が私の命を狙っていることもわかっています。ですが、今は何もできない。だから、彼に怪しまれないようにすることくらいしかできないのです」

< 36 / 269 >

この作品をシェア

pagetop