望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 アドニスは頷いた。
「つまり、その兄さんと義姉さんの昨日は、その使用人に怪しまれないためにするための形だけだったと?」
 そう彼は言う。だが、その顔にはこの屋敷の中にもすでにダレンバーナの手が伸びていたことに、いささか驚きを隠せない表情が浮かんでいた。

「ええ、そうですね」
 カレンは組んだ腕を崩して、右手を頬に当てた。そして少し考える。
 その使用人を逆に利用する手はないだろうか、と。
「アディ。おバカな義姉からのお願いです」
 あえて、おバカを演じる。

「はい、なんでしょう?」

「これからも私と仲良くしてくださいね」
 にっこりと笑うとそれは何かを企んでいる魔女のようにも見える。

「それは、もちろんです。僕はもう、他の人を義姉とは呼びたくない」
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