望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 彼の名を口にすると、少しカレンは嬉しくなった。あの家を離れてから誰かの名前を口にしたことがあっただろうか、いや、無い。

「どうぞ、こちらにお座りください」

「はい」
 アディに促され、ソファに座る。談話室、のようだ。いつの間にか侍女がいてお茶を淹れてくれた。ちょうど喉が渇いていたところだ。

「毒は入っていませんよ」
 アドニスがニッコリと笑った。特に警戒をしていたわけではないのだが。

「ありがとうございます。ちょうど喉が渇いていたところなのです」

「やはりあなたは、他のダレンバーナの女性とは違うようですね。ということは、疑うところは、あなたの身分なのですが」

「身分詐称。でもしていると?」
 ソーサー毎カップを持ち上げて、カレンは一口飲んだ。

< 6 / 269 >

この作品をシェア

pagetop