望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 小声でそう呟いたのは、アドニスだ。そう、この部屋に入ってきたのが彼。

「私は何もしていない。この女が勝手にしたことだ」
 黒豹が答える。

 はあ、とアドニスはため息をついた。兄が言い訳をしているようにしか聞こえないから。
「兄さん、人型には戻れないのですか?」

「ああ、怪我酷いからか、なぜか戻ることができない」
 再び、アドニスはため息をついた。兄が不覚をとったとしか言いようがないからだ。

「本当に、兄さんは何をやっているんですか。当分、そのままでいてください」
 ため息と共に、静かに言葉を吐き出す。兄を威嚇してやりたいところだが、隣にカレンが眠っているため、このやり取りで起きてしまうのも困る。

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