望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「何を。お前が来るのが遅いから、こうなったのだろう」
 やはりこの兄は弟のせいにしてきた。遅かったのではない。アドニスが迎えにいくより先に、カレンが出会ってしまったのだ。この姿の彼と。
 そして、そこでカレンがもぞりと動いた。ん、んっと、少しだけ声をあげる。

「兄さん、興奮しないでください。義姉さんが起きてしまいますから」
 アドニスは囁くような声で、わざとらしくそんなことを言う。

「ふん」

「部屋に戻りますか?」
 アドニスのその問いに黒豹は頭を下げた。どうやらここで休むつもりらしい。動く気はないようだ。

「なんだ。結局、義姉さんの側がいいんじゃないんですか」
 アドニスはじろっと黒豹を見下ろした。なんだかんだ文句を言いながら、カレンの側を離れようとはしない黒豹姿の兄を。

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