望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「私が今動いて、この女が目を覚ますのも面倒だろう」
 言い訳のようにも聞こえる。だから。
「そういうことにしておきます」

 アドニスは、どこからか毛布を持ってくるとカレンの身体の上にふわりとそれをかけた。いくら黒豹に抱き着いて眠っているとしても、まだ夜は冷えるこの時期。このままでは風邪をひいてしまうだろう。

「そういえば、兄さん。肩の怪我は?」
 はっと思い出したようにアドニスは声をあげる。そもそも黒豹は大きな怪我をしていたのだ。だから、アドニスが止血できるような何かを取りに行っている間に、カレンが来てしまったということ。

「この女が治した」

「へぇ」
 アドニスが黒豹の後ろに回って、まじまじとその肩の部分を覗いた。
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