【完結】私と彼の一日限定恋愛。〜探偵編〜
◇ ◇ ◇



「あの、すみません」

 まだ少し肌寒さの残る三月の中旬、私は彼と出会った。

 出会い方なんて人それぞれだとは思うけど、
私はなぜその人に出会ったのかは、未だに分からないままだ。

「はい?」

 彼との出会いは運命だったのか、それともーーー。


「ちょっといいですか?」

「え、私……ですか?」

「はい。あなたです」

 その男性は、ミントグリーンのフード付きのパーカーを着ていて、ネイビーのジーパンを履いていた。

「……何でしょうか?」

 背は高くすらっとしていて、まるでモデルみたいみたいだなと思った。

「あなたにひとつ、頼みがあるのですが」

「頼み?……私に?」

「はい」

 え、頼みってなんだろう……?

「頼みとは……?」
 
 なぜ私なのか、私自身もまだ分かっていない。

「今日一日だけでいいので、俺の恋人役になってくれませんか?」

「……え?」

 そう言われたのは、突然だった。
 何を言われているのかを理解するまで、時間がかかった。

「僕の恋人役を、ぜひあなたにお願いしたいのですが」

 ん……?んん!? こ、恋人役!?

「私が? 私があなたの恋人役、ですか?」

「そう、今日一日だけ。……お願いします」
 
 いや、そう言われても! いきなりすぎて頭の中、訳が分からない!
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