【完結】私と彼の一日限定恋愛。〜探偵編〜


 静哉さんは、悲しそうに私の方に振り向く。

「私は、あなたのこと忘れたくない。……あの時のキス、すごく嬉しかったんだよ」

「……莉、羅」

 静哉さんのその表情から、何も読み取ることは出来なかった。

「それにまだ私、お礼してもらってないです。恋人役のお礼、してくれるんですよね?」

「……そうだっけか」

「そうです。……だからお礼、今ここでしてください」

 私は静哉さんの服の袖を引っ張ると、そのまま唇を寄せて思い切り口付けた。

「……っ」

「莉、羅……」

「キスくらい、どうってことないでしょ。……もう三回も、キスしたんだから」

 あの日私たちは、キスをしたんだ。そこに意味があったかなんて分からない。
 でも意味があったと、そう思いたいの。

「教えて、静哉さん。あのキスに……愛はなかったの?」

 私は愛があったと思ってる。……だって、ちゃんと優しいキスだった。

「……そんな訳ないだろ。愛がない訳、ない」

 そう言うと思っていた。……私もそうだから。

「だったら……逃げないでちゃんと捕まえててよ、私のこと」

「……傷付けてごめん、莉羅」

「そう思うなら、もう逃げないでください」

 そう言うと私は、再び彼の唇を奪った。
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