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◇
「あ、このゴリラ凄い!」
ゴリラの檻は一部がガラスになっていて、
間近でゴリラが見られる。
その迫力に、私ははしゃいでしまう。
先程迄の、わだかまりなんか忘れて、私は動物園に来てはしゃいでいた。
動物園なんて、本当に久しぶり。
小学校の時の、遠足以来。
「デカイな」
蒼君も私の隣で、そう笑っている。
「ねぇ、あっちにうさぎの広場あるみたいだよ?
見に行かない?」
先程、ゴリラ舎に来る途中に見えた看板に書いていた。
「うさぎ…懐かしいな」
蒼君の言葉に、私も昔を思い出し懐かしくなる。
児童養護施設に居た、あのうさぎ達。
うさぎの広場は、柵で囲われていて、
その柵の外からしか見られない。
時々、こちらに近付いて来てくれる子はいるけど、
触れる事は出来ない。
数えてはないけど、大きな野原にうさぎが10匹以上居て、
穴を掘ったり、小屋に籠ったり、走り回ったりしている子が居る。
「一枝さん所のうさぎ、こんな風にみんな一緒に暮らしてないよな」
蒼君のそれに、そうだね、と頷いた。
一枝さんの所のうさぎ達は、一匹ずつケージに入っていたし、
きっちり温度管理をされていて、
まだ5月なのに冷房も入っていた。
「野生のうさぎもそうだけど、学校や施設に居たうさぎ達もこうやって外でみんなで暮らしてるのに。
一枝さんの所のうさぎは、なんでそれがダメなんだろう。
2匹以上一緒にしたら、喧嘩するって言ってたし」
「なんでなんだろうね」
施設に居たうさぎ達も、相性悪い子達も居たけど、それなりに仲良くみんな同じ場所で暮らしていた。
「でも、どちらのうさぎにも共感するよな。
一人じゃ寂しくて誰かに側に居て欲しいと思うけど。
一人で居る方が楽で、誰にも関わりたくないって時も」
「そうだね」
ここのうさぎも、一枝さんの所のうさぎも、どちらもそれなりに満足そうに見えるもんな。