trade

「未希も、何か食べたいものある?
俺一人で勝手に注文してるから」


「ないけど。
そんなに食べられる?」


私は、お酒を飲むとあまり食べられなくなる方だし。


「残ったら残ったでいいだろ?
そりゃあ、食べ物を粗末にして悪いけど」


なんだか、最後なんだから、って言葉が続きそう。


「あ、チヂミも追加して。
私、ここのチヂミ好きだから」


私がそう言うと、蒼君は笑っていいよ、と答えた。



暫くすると、私達のテーブルには、所狭しと料理が並んだ。

それで、近くのテーブルの人達から視線を集めていた。


どうせ、食べられないだろ?

あんなに頼んで、残すんだろ?


みたいな事を思われているんだろうな、と、思う視線。


なんだかそれに逆らうように、
テーブルに並んだ料理を取り皿に入れ、ハイペースで食べて行く。


「未希、やっぱりお前って、すげぇ昔から食うよな?」


私を見て、蒼君はケラケラと笑っている。


もう、酔っているのだろうか?


ちょうど、生中を飲み終えた所だけど。


「蒼君が、一杯頼むから!」


そう、ちょっとむきになり言い返してしまう。


「そうだな。
けど、お前とこうやって酒飲むの初めてだよな?」


そう言われてみると、そうだな、と思う。

昔は私達は未成年だったし。

ここ数日間蒼君と過ごしたけど、
蒼君は家では、飲まない人だった。


「蒼君、酔ってる?」


もしかしたら、蒼君けっこうお酒弱いのかな?


すでに、顔がほんのり赤い。


「んー、いつもはもうちょい行けるんだけど。
二杯目は、烏龍茶にしとく。
頼むけど、未希どうする?」


「じゃあ、私も烏龍茶で」


そう言うと、生中のグラスの残りを飲み干し、空にした。


< 112 / 129 >

この作品をシェア

pagetop