trade
沢山あった料理だけど、頑張って8割は無くなった。


私が頑張ったのもそうだけど、蒼君がけっこう食べてくれた。


「そういえば、蒼君も、けっこう食べれる方だったよね?」


普段はそこまで食べないけど、
児童養護施設の時、カレーの日でおかわり自由の日とか。

後、ピザ焼いていた時もよく食べていたっけ。


「こんなに食べたの、久しぶりだけど」


そう、笑っていて。


本当に、楽しそうだな。

妙なくらい。


「アンケートでも書いておくか。
抽選でブルークローバーグループの全店舗の飲食店で使える食事券三千円分貰えるみたいだし」


そう言って蒼君は、テーブルの上に立てて置いてあった、そのアンケート用紙一枚と、一緒に立ててある鉛筆を手に持った。



「食事券…」

そんなもの欲しいのだろうか?


ちらりと、蒼君を見ると、簡単なアンケートに順番に答えて記入していっている。


今日は誰と来ましたか?の質問に、
恋人、と記入しているのを見て、頬が緩んでしまう。


後の質問は、値段設定、店員の接客、料理の味とか、店の雰囲気とか、それが良いか悪いか。


そして、"何かご意見や、感想等あれば"の下の空白欄に、
料理の感想等を書いていた。

けっこう悩みながら書いてるわりには、
大した事を書いてなくて、ちょっと笑ってしまう。


そういえば、蒼君って、昔から作文とかも苦手だったし、
昔貰った手紙も、文章が上手ではなかった。


今も、何が美味しかったです、とか、そんな簡単な感想ばかり。


でも、天ぷらが美味しかった、って文章に、ん?と思ったが。


ああ、ちくわの磯辺揚げの事か、と思い当たる。


「後、名前と連絡の付く番号とメールアドレスか…」


そう言って、蒼君は、
武田蒼、とその名前を書いた。


そして、電話番号は、111-1111-1111とデタラメ。

メールアドレスは、もう書いてさえいない。


「もし、食事券当たったらどうするの?」


そう訊くと。


「いいんだよ。伝われば。
とにかく、今日は料理も旨かったし、こうやって未希と酒飲めて楽しかったから。
その、お礼だよ」

「そう…」


このアンケートは、このお店の人が読むのだろうか?

それとも、【笑い鳥】を経営している、そのブルークローバーグループ?


てか、ちゃんとアンケートとか見るのだろうか?


< 113 / 129 >

この作品をシェア

pagetop