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「おい!」
そのお巡りさんがこちらに一歩踏み出す瞬間、
「動くな!」
蒼君のその声が響いた。
ガヤガヤとしていたのに、周囲の人達は会話を止め、みんなこちらを見ている。
「俺は武田蒼で、双子の兄の上杉朱を5年前に殺した。
そして、上杉朱と入れ替わった」
その蒼君の言葉に、静かだった辺りがザワザワとしだす。
「見付からないように埋めたのに、見付かって。
本当、最悪。
どうせさ、もう俺は逮捕されるし。
人生詰んでるだろ?
全部なくなって。
だから、道連れにこの女殺して、俺も死のうと思ってさ」
「蒼君…何言ってるの?」
今の蒼君は、嘘付く癖の、爪先に目線は向いてないけど。
その言葉は本心じゃないだろう。
蒼君が、私を殺せるわけないから。
その言葉は嘘なのに、そうやって目線が下がらず、真っ直ぐに私を見て来るのは。
その言葉に、強い意思があるのだろう。
「未希、俺と死んでくれよ?」
ナイフの刃が、私の鼻先に触れる。
「辞めろ!!」
そのお巡りさんは、腰のホルダーから拳銃を取り出し、
蒼君に向けている。
「ダメ、蒼君は私を刺せな――」
そう言い終わる前に、思い切り蒼君に押されて、
私は地面に押し倒された。
頭も体もアスファルトに打ち付けて、凄く痛くて、
目をきつく閉じてしまう。
腹部に重さを感じ目を開けると、
ナイフを両手で持った蒼君が私を見下ろしている。
蒼君はナイフを持った両手を上に上げると、
私に思い切りそれを振り下ろした。
その瞬間、バン、という大きな音が聞こえ、
蒼君の首から、真っ赤な血が噴き出した。
蒼君はナイフを手から落とし、銃で打たれた首を手で抑えている。
視界の隅に、蒼君を撃った若いお巡りさんが、拳銃を握りしめ、震えているのが映る。
そのお巡りさんがこちらに一歩踏み出す瞬間、
「動くな!」
蒼君のその声が響いた。
ガヤガヤとしていたのに、周囲の人達は会話を止め、みんなこちらを見ている。
「俺は武田蒼で、双子の兄の上杉朱を5年前に殺した。
そして、上杉朱と入れ替わった」
その蒼君の言葉に、静かだった辺りがザワザワとしだす。
「見付からないように埋めたのに、見付かって。
本当、最悪。
どうせさ、もう俺は逮捕されるし。
人生詰んでるだろ?
全部なくなって。
だから、道連れにこの女殺して、俺も死のうと思ってさ」
「蒼君…何言ってるの?」
今の蒼君は、嘘付く癖の、爪先に目線は向いてないけど。
その言葉は本心じゃないだろう。
蒼君が、私を殺せるわけないから。
その言葉は嘘なのに、そうやって目線が下がらず、真っ直ぐに私を見て来るのは。
その言葉に、強い意思があるのだろう。
「未希、俺と死んでくれよ?」
ナイフの刃が、私の鼻先に触れる。
「辞めろ!!」
そのお巡りさんは、腰のホルダーから拳銃を取り出し、
蒼君に向けている。
「ダメ、蒼君は私を刺せな――」
そう言い終わる前に、思い切り蒼君に押されて、
私は地面に押し倒された。
頭も体もアスファルトに打ち付けて、凄く痛くて、
目をきつく閉じてしまう。
腹部に重さを感じ目を開けると、
ナイフを両手で持った蒼君が私を見下ろしている。
蒼君はナイフを持った両手を上に上げると、
私に思い切りそれを振り下ろした。
その瞬間、バン、という大きな音が聞こえ、
蒼君の首から、真っ赤な血が噴き出した。
蒼君はナイフを手から落とし、銃で打たれた首を手で抑えている。
視界の隅に、蒼君を撃った若いお巡りさんが、拳銃を握りしめ、震えているのが映る。