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「にしても、女の一人暮らしでオートロックもなく、一階に住んでるとか、物騒だな?」
永倉さんは、私のワンルームマンションの部屋のど真ん中で、胡座をかいている。
元々広い部屋じゃないけど、この人が居ると、部屋が一段と狭く感じる。
狭くなった部屋の隅で、私も腰を下ろした。
「永倉さんの方が、物騒ですけど」
そう言うと、ふっと鼻で笑っている。
「そうやって軽口叩けるなら、大丈夫だな」
まさかと思うけど、私を心配して訪ねて来てくれたのだろうか?
なんで、私の自宅を知ってるの?と思ったけど、
あのお店で働いていた時、履歴書は出してないが、簡単な連絡先を記入したのと、身分証のコピーは取られていたな。
「あの上杉製菓の御曹司の入れ替わり、けっこう派手にテレビで流れていたな」
そう楽しそうに話されて、少し腹が立つ。
一時期、毎日のように蒼君の事がニュースになっていた。
私はそれが嫌で、テレビを一時期見ないようにしていた。
「人質のお前が、あの殺人犯の娘だってのは、テレビでは流れてなかったけど。
ネットでは、ちらほらとあるみたいだな」
そうなんだ。
私は被害者だから、テレビではそうやって流れないけど。
ネットでは、そうやって私の関係ない事迄言われるのか。
「永倉さん、一体私に何の用なんですか?」
さっきから、苛々とさせられる。
「俺は特にお前に用はねぇよ。
兄貴の使い」
「一枝さん?」
ふと、一枝さんは元気にしているのだろうか?と、少し懐かしくなった。
それより、それなら一枝さん本人が来てくれたらいいのに、と思う。