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「実際、俺も紫織ちゃんも、彼じゃないから、分からないよ。
このアンケートも、たまたまそう読めただけなのかもしれない。
その朱君が撃たれた時だって、
報道の通りだと、自首する為に交番に行ったんでしょ?
それで、いざ自首するとなって、怖くなって、紫織ちゃんを道連れに殺して自分も死のうとしたのかもしれない。
本当の所は、わからないよ」


一枝さんの言うように、そうかもしれない。


蒼君の考えていた事は、蒼君にしか分からない。


もう、それは永遠に分からない。



「一枝さん、無償でこの件を受けるのは気が引けるので、ほんの少し一枝さんの役に立っていいですか?」


「何してくれるの?」


「私も、うさぎの爪切れるんですよ」


蒼君があの児童養護施設を出た後、
うさぎの爪切りは、私がしていたから。


「それは、助かるよ」


そう、笑う顔を見て、私も笑った。


私の右手の小指に、今も蒼君の小指の感触が残っている。


約束、だと。




(終わり)


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