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「朱は、この世にもう居ない。
俺が殺したから」
そう言う蒼君は、嘘付く時の癖の、爪先を見る事はなく。
横に居る、私に視線を向けて来る。
「未希も訊く前から、そう思ってただろ?」
それに、頷く。
永倉さんが言わなければ、そんな可能性を考えなかったのだけど。
「朱とは…、あの施設に入れられて、
すぐにあいつが上杉の家に貰われて行って、それっきりだった。
俺と朱は、ずっと父親から虐待受けていて。
俺と同じようにあいつもその虐待の被害者だから、
同じ、暗い過去を共有してるからか、お互いに、もう二度と会いたくないと思ってた。
俺も朱もその虐待されてた過去を忘れたいから、連絡なんて取る事もなくて。
もう二度と、俺と朱は会わないはずだった」
蒼君が、あまり双子の兄弟の事を、私も含め色々な人に語ろうとしなかったのは、そういう理由なのか。
「会わないはずだったんだけど…。
朱に、会いたくなってしまった。
ずっと、自分の中で、抑え込んでいた気持ちだったのかもしれない。
だから、就職だって、あいつが貰われていった、上杉製菓の近くで」
そうだったんだ。
蒼君は都会に憧れていたのではなくて、
都会に住む、生き別れの双子の兄の近くに。