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「でも、俺、紫織ちゃんの事欲しいな。
出来れば、俺だけのものにしたい」


「一枝さん、私の一体何が、そんなにも気に入ったのですか?」


この人なら、私にそれ程拘らなくても。

女性には、困ってないだろう。


「もお、紫織ちゃん、一体俺に何を言わせたいの?」


そうやって、すぐにこの人のペースにされるけど。


じっと見てると、口元を上げて笑い、口を開いた。



「前にも言ったけど、朱君と何かあるから紫織ちゃんに興味持ったのだけど。
でも、第一印象から、紫織ちゃんの顔が凄くタイプだった。
スタイルも、好き」


「ありがとうございます…」


褒められてるみたいで、ちょっと照れ臭い。



「ぶっちゃけ、俺ら体の相性良いでしょ?」


やはり、私とこの人、体の相性が良いのか。


「体だけじゃなくて、紫織ちゃんとは、色々と相性が良いな、って思う。
だから、側に居て欲しいな、って」


そうやって、側に居て欲しいとか言うけど。



「でも、私と付き合いたいとか、そういう事は思わないんでしょ?
だって、一枝さんは、誰かに愛されたくない。
それは、私も含まれるでしょ?」


結局は、私はこの人にとって、遊びで。



「紫織ちゃんが付き合いたいなら、付き合ってもいいよ?
結婚もそうだけど。
どちらも、形だけならいいよ。
紫織ちゃんの言うように、俺は愛されるのは、ごめんだけど。
でも、凄く愛してあげるよ」


この人は、私を愛してくれる。


この人となら、色々上手く行くのだろうなって、分かるけど。



「一枝さん、私の事をよく知らないから、そんな事言えるんですよ」


「否定したいけど、確かに、俺は紫織ちゃんの事を、よく知らないね。
本当は、未希って名前だってくらいしか」


なんで、私の本当の名前知ってるの?と思ったけど、
そういえば、あのお店で蒼君に私が話し掛けた時、この人も居たな。


"ーー誰って…。未希だよ?
あ、昔と違って化粧とかしてるから、分かんなかったかな?ーー"


そうじゃなくても、蒼君からも聞いてるか。
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