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私は昔を思い出していた。


蒼君が居なくなり、私はそれから色々な男性と付き合うようになった。


その当時、通っていた高校では、みんな私の父親の起こした事件を知っていたので、
同じ高校で、私と付き合うような男なんて居なかった。


だから、最初に付き合ったのは、
バイト先のファミレスで一緒に働いていた、1つ年上の彼。


もちろん、その彼とは違う高校だったし、同じバイト先に、私のその父親の事を知っている人は居なかった。


でも、その彼の友達が、私の高校に何人か居たみたいで、
すぐに知られて。


別れを、切り出された。


だけど、その彼を全然好きじゃなかったから、
別れる事はどうでも良かったけど。


ただ、そうやって殺人者の娘だから、と遠ざけられた事には、傷付いた。


その後は、電車で声を掛けられたりとか、
よく行くコンビニで、とか、そうやって知り合って、付き合って。


私の父親が殺人者だと知り、フラれる。


体だけの関係ならば、私の父親の事を知ってる人も何人か居た。


知ってるから、私なら簡単にヤれると思われていて、近寄って来るのだろうけど。


私自身、男に抱かれるのは好きだから、それを分かりながらも受け入れ、それだけでは足りず、繁華街とかに足を運んで、
一夜の相手を求めたりもあった。


高校卒業後、就職してこちらに出て来てからは。

流石に、私の父親が殺人者だなんて知る人は居なくて。


普通に、身近な人と付き合うようになった。


それは、職場とかで。


でも、結局は、私は蒼君が好きだから、その人達と上手く行かなくて。

一年前、最後に付き合った同僚とは、
別れを切り出してもなかなか別れてくれなくて。


私の父親が殺人者だと、伝えた。


それを聞いたその彼は、あれほど私と別れたくないとか、別れるくらいなら死ぬとか言ってた癖に、
あっさりと、私と別れ。


その彼から、今の職場にも、私の父親の事が広まった。


もう、辞めた職場だからどうでもいいけど、
それ以降、私は仕事場では、いわゆる、ぼっちだった。


その父親の起こした事件の事もそうだし、
私は蒼君が好きで、他の男性を好きになれないから。


もう、男性と付き合うのは、面倒で。


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