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「だから、一枝さんは、これ以上私に関わらない方がいいですよ?」
目の前のこの人とでも、
付き合うとかは…。
でも、他の男の人達と違い、面倒だからとかじゃなくて。
なんでかな?怖い…のかな?
「ちなみに、紫織ちゃんのお父さんは、どんな流れで人を殺したの?
捕まってるんだよね?」
「父親は、今も拘置所に居て、死刑囚なんです。
今から十年近く前にT県で、不倫した私の母と、その相手の男性を殺し。
それに巻き込まれた関係ない人も刺して。
三人、殺しました」
「あ、昔、そんな事件があったの、ぼんやりと思い出した。
そうそう。
その娘を目の前にして言っていいのかは分からないけど。
母親やその不倫相手の男は、ちょっと同情出来ない所あるけど。
その巻き込まれた人は、当時、凄く気の毒だな、って思った」
その事件は、当時、全国的なニュースとして、一時世間を賑わせた。
だから、こうやって知ってて今も覚えている人は沢山居る。
「でも、俺自身は、だからって紫織ちゃんに対して、引いたりはないけど」
「え?」
「うちの父親なんか、もっと殺してるからね。
まあ、捕まってはないけど」
そういえば、そうだった。
この人の父親は、ヤクザの組長。
「私…今は、蒼君の愛人で。
そうじゃなくても、すぐに男の人と寝て。
本気で付き合う相手に選ぶような女じゃないんです」
「なに、その自虐」
そう、クスクスと笑っている。
「辞めてた方がいいですよ?
私、一枝さんの事を好きになってしまうかもしれない」
この人と今より関係を深める事が怖い、と思ったのは、
この人に惹かれてしまうような気がして。
もし、私がこの人を好きになったら、
一枝さんは、そんな私を…。
「もし、私が一枝さんを好きになったら、
私を殺します?」
私が、邪魔になったら。
「なに、それ?」
そう、首を傾げている。