trade
私と同じように、蒼君も料理が全くダメみたいで、
夜は宅配でピザを頼んだ。


「昔、施設に居た時、みんなで園庭に大きな石釜作って、時々ピザ焼いたりしたよな?」


その届いたピザをリビングのテーブルで広げて食べている時、
蒼君は思い出したように話し出した。


それは、私が中学三年の夏くらいに始まったイベント。

それから、月に一度で行われ。


蒼君は、もう高校三年生だったので、
そのピザを焼いて食べたりのイベントは、数回だけだった。


「うん。生地とかも手作りで。
けっこう粉ぽかったけど、美味しかったよね」


みんな、そのピザを焼いて食べる日を、楽しみにしていた。


「あの頃、ピザって高級品って思ってたな。
朱と入れ替わってから、ピザだけに限らず、良いもの沢山食べたんだけど。
あの時のピザ程、旨いって思うものはなかったな」


蒼君は、手に持っていたピザの切れ端を、口に運ばず、箱に置いた。


なんだか、その姿を見ていて、私も食欲がなくなってしまう。


「やっぱり、俺は俺のままなんだろうな」


その言葉が、どういう気持ちで言われたのかは分からない。


朱と入れ替わっても、そうやって変われない自分が、嫌なのだろうか?


それとも、それが良かった、と思っているのだろうか。



再び、蒼君は何もなかったようにピザを食べ始めたので、
私も同じように食べる。

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