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蒼君だけじゃなく、私からも夢中で求めるように、肌に触れた。


「未希、好きだよ」


そう、耳元で何度も言われた。

その度に、嬉しくて胸が震えるのだけど。


何度言われても、私の心は満たされない。

別に、蒼君と結婚したいとかそんな事を思っているわけじゃないけど。


私達の関係は、この先も公に出来ないもので。

その不安定さに、私の心はずっと怯えている。


どれだけ蒼君が私を好きだと言ってくれても、
完全に、蒼君が私のものにならなくて。

また、蒼君が居なくなるんじゃないかって。



蒼君は、昔からそうであったように、
ゴムを着けずに私の中へと入って来る。


今まで、それ程考えなかったけど、
もし、これで妊娠したらどうなるのだろうか?と、思ってしまった。


きっと、一枝さんがあれ程その辺り慎重だったから、少し影響されて、私も危機感を持ったのかもしれない。


いや、危機感ではないのかもしれない。


私は、蒼君とのこの行為で、妊娠してもいいと思っている。


一人で、その子供を育ててもいいし。


もしかしたら、蒼君と…と、無理な夢も見てしまう。



「蒼君、好きだよ」


私の上で腰を動かしている蒼君の背に回している両手。


その両手に、力を込めた。

もっと、この人と一つになりたいと。



「未希…」


蒼君は私の耳元でそう言うと、
腰の動きを早くして、私からそれを引き抜いて、私のお腹の上にそれを出した。


蒼君は、私のお腹のそれをティッシュで綺麗にしてくれると、
私の隣に寝転んだ。

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