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「昔、一緒に一度だけラブホテル行ったけど、
あの時は泊まれなかったから、こうやって未希と一緒に寝るの、初めてだよな?」
その言葉に、そうだね、と頷いた。
児童養護施設に居た頃の私達は、
大方は、施設の庭の大きな倉庫の中で、
隠れてセックスをしていた。
近くの公園の、個室のトイレでも、何度かした。
近くの雑木林で、ってのもあったな。
本当に、以前蒼君が言っていたように、あの頃の私達は若くて。
そうやって、必死なくらいセックスしていた。
「昔の俺、付き合ってる女とどうしていいか分からなくて、
すぐに、未希を抱いてたな。
今思うと、もっと色々な所に未希の事連れてってやったり、プレゼントしたりすれば良かった」
「うん…」
蒼君的には、昔の私との関係は、付き合っていたんだ。
ちゃんと、付き合って欲しいとか言葉にされた事無かったから、そうじゃないと思っていたけど、そうだったのか。
「未希、なんで笑ってんの?」
「え、ううん」
嬉しくて、ついつい顔が綻んでしまっていたみたい。
昔の私と蒼君は、ちゃんと彼氏彼女だったんだ。
「昔、俺、バイト代とかもいつか都会に出る為に殆ど貯めてたからな。
今思うと、もっと未希の為に使えば良かった」
蒼君がバイトしていたのは知っていたけど、そうやって貯金していたのは知らなかったな。
「そういえば、蒼君が私にくれるプレゼントって、いつもちょっとズレてたよね?」
思い出して、笑ってしまう。
蒼君からの、誕生日やクリスマスプレゼント。
当時、中学生だった私に合わせてなのだろうけど、
いつも文房具や、参考書とかで。
学校指定の、白い運動靴とかもあったっけ?
通学に使える、リュック。
「え?そんなにおかしなもの、俺あげてた?」
「うん。だって、好きな相手からなら、普通は指輪とかのアクセサリーとかが欲しいもん」
昔は、それを言わなかったけど。
だって、それらのプレゼント、みんな蒼君が一生懸命選んでくれたものだって、分かったから。
凄く、嬉しかったな。