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「朱は、あの夜、俺を殺すつもりだった。
ドライブに行こうって言われて…。山の中で車停めて話していて…。もう会いたくないって言われて…。
それを断る俺の首に、迷いもなく手を伸ばして来た…。
その時、朱が言ってたんだ。
お前なんか、居なくなっても誰も捜さない。俺とお前とはもう存在価値が違うって」
"ーーお前だって、きっと、居なくなっても誰も本気で探して貰えない…。
俺とお前は、そうなんだよ。
上杉朱とは、違うーー"
以前、私が蒼君にそう言われた事を思い出した。
その言葉は、元々本物の上杉朱の言葉だったんだ。
「朱を殺した後、どうしようか、と途方に暮れて。
とにかく、朱の死体をこのまま車でどこかに運ぼうと思ったんだ。
遺体をトランクに入れようと開いたら、
そこに新品の大きなスコップが入ってて。
それ見て、ああ、朱は俺の事を殺すつもりで…、って。
俺を殺して、山に埋めるつもりだったんだって」
蒼君から、朱を殺した事は聞いていたけど、
その後の事は知らなくて。
気にはなっていたけど、訊けなかった。
本物の上杉朱を殺した後、それをどうしたのか?と。
「埋めたの?
本物の朱を?」
その私の言葉に、蒼君は頷くと、項垂れている。
「朱を埋めて…。
埋める前に、朱の衣服を全部脱がせて、俺がその服に着替えた。
俺の服と朱を、埋めた」
「そう」
「後は…。俺、免許はまだ持ってなかったけど、ずっと教習所には通ってて。
だから、運転は出来て。
朱の車をそのまま運転して、朱が持ってた免許証の住所見て、そのまま上杉家に帰った」
「蒼君、教習所通ってたんだ?」
今は、それはどうでもいいのかもしれないけど。
知らなかったな、と思った。
「うん。次、未希に会った時、驚かそうと思ってた。
いきなり車は買えないから、レンタカーでも借りて、未希とどっか行きたいな、って」
そう、少し笑顔を浮かべて語られたそれを想像してみた。
もし、それが現実になっていたら、私はとても喜んだだろうな。