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蒼君は私から体を離すと、ベッドボードにある、自分のスマホに手を伸ばした。


そして、誰かに電話を掛けている。


「こんな夜中に、誰に電話するの?」


思わず、訊いてしまう。


だって、今は深夜の3時。


「…婚約者。時差あるから大丈夫」


そういえば、蒼君の婚約者は海外に留学中だった。


「俺、婚約者と別れるって言って、
まだ何もしてなかった」


その言葉を言い終わる前に、
私は蒼君の手にあるスマホを奪い、
コール中のその通話を切った。


「未希?」


「…婚約者と、別れなくていいよ」


「いや、それは」


「私がいいって言ってるの!」


蒼君が話そうとするのを、そう言って遮る。


「だって、蒼君は私と結婚出来ないんでしょ?」


今の蒼君は、上杉製菓の御曹司。


私は、殺人犯の娘。


「…未希と結婚は、無理だろうな」


「なら、蒼君が他の誰かと結婚しても、いいよ。
私は、ずっと愛人でも構わない」


私は、今の上杉朱である蒼君から、何も奪いたくない。


私が蒼君を幸せにしてあげられないから、
なら、それが他の誰かでも構わない。


ただ、私はこれからも蒼君の側に居られたらいい。

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