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私と蒼君は、ひたすら走った。


今まで生きて来て、これ程走った事はないだろう。



蒼君よりも、体力のない私の方が先に力尽きて、
倒れ込むように足が止まった。

「未…希…?」


蒼君も足を止め、そんな私の体を支えてくれる。



「逃げないと…。
さっきの刑事達が…来ちゃう」


後ろを振り返ると、数人歩いているけど、先程の警察官達は居ない。


「未希…俺…」


そう言葉を止める蒼君。


その後、何を言おうとしたのかは分からないけど。


「蒼君、一緒に逃げよう?
私、また蒼君と離れ離れになりたくない!」


「未希…」


「一生逃げ切れないかもしれないけど。
でも、一秒でも長く蒼君と一緒に居たい」


そう懇願する私に、蒼君は覚悟を決めたように頷いた。


「…分かった。
とりあえず、スマホの電源切って捨てようか」


スマホ?


そうか。


電波の反応から、居場所が分かるのか。


「さっきの刑事さん達の感じなら、まだ俺に逮捕状は出てなさそうだけど、念のためにスマホは捨てておこう」

今の段階では、まだ蒼君は重要参考人程度なのだろうか?


なら、逃げない方が良かったのかな?


こうやって逃げて、犯人だって言ってるようなものだし。

でも、蒼君あのまま朱を殺害した事を、自供しそうだった。


「どのみち、俺は逮捕されるよ」


私の顔を見て不安を察してか、蒼君はそう言ってくれた。

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