シンガポール・スリング
6
・・・・・・・
レンは自分に対しても、未希子に対しても怒り狂っていた。
なぜ話を聞こうとしないっ!
レンには理解できなかった。そして、何とかなるだろうとこの状態を3週間も放置していた自分に猛烈に腹を立てていた。
12時に迎えが来る予定だったが、今はまだ11時を過ぎたところ。携帯で送迎の時間と場所変更をした後、なんとか冷静に考えようと試みたが、怒り以外何も込み上げてはこなかった。
未希子は人の話も聞かない、ただの分からず屋だ。
そう考えると、少し気分がよくなった。
自分だけが悪かったのだろうか。
そんなわけはない。端から聞こうとしない未希子が悪いし、自分勝手に結論付ける彼女の態度に頭が来た。未希子が言っていた通り、1週間後には自分にぴったりの女性に会えるかもしれない。この3週間未希子に恋い焦がれ、思いを募らせていた自分をばかばかしく感じた。
ちょうどその時携帯が鳴り、レンが今一番話したくない相手の名前が表記された。
「・・・もしもし」
「もしもし、レンや?一体今どこにいるの?」
「・・・昨日日本に帰ってきました」
「私からの連絡を全部はぐらかして、何も言わずに帰国するなんてひどいじゃないの!」
「すみません。ナイナイ、今は話す気分じゃないんです」
「どうしたの?・・・未希子さんに会えなかったの?」
「会いましたよ。でも、もう二度と会うことはないと思います」
「?!・・・どういうことなの?」
「どういうことかは彼女に聞いてください。とにかくそのことについて話したくないんです」
「・・・何を言って・・・」
「正直、今はもうどうでもいいです」
レンは投げやりに答えた。
「そんな簡単に気持ちを切り替えられるはずないでしょうに」
レンは歯噛みしそうになった。
祖母がレンを思って言っていることは十分にわかっている。ただし今はその言葉を聞きたくない。気まずい空気が携帯越しに伝わってきた。
「全ては終わったことです。ナイナイの思うように事が運ばなかったことを許してください」
レンはこの話は終わりだというように、シンガポールでのファッションショーについて聞いた。
「とってもよかったわよ。また何着か購入してしまったの。向こうが商売上手なのか、私が買い物好きなのかはわからないけど」
「ナイナイが楽しんでいるようでよかったです」
「でも、今日帰るわ。そして、何が起きているのか私がはっきりさせます」
「ナイナイ・・・・」
「思い合っている二人がこんなことになるなんて、おかしいもの」
「・・・・・ナイナイ。はっきり言いたくはないんですが、自分は振られたんです。そして、自分は前に進むことにしたんです。正直今回のプロジェクトを終えた後、真剣に見合いを考えようとも思っています」
「レン?!そんなバカな話はないわ」
「女性は彼女だけじゃありませんし、彼女が・・・自分たちは合わないとはっきり言っているんです」
「そんなはずはありません!」
レンは立ち止まって、目を閉じた。
音を立てないように深く深呼吸をし、できるだけ落ち着いた声で携帯の向こうにいる人物に話しかけた。
「ナイナイ。もう一度だけ言います。二度と彼女の名前を自分の前で言わないでください。特に今は聞きたくないんです」
優美はレンの声色を聞いて息を吞んだ。
「・・・とにかく今日帰るわ。無理しないでちょうだい。秘書さんが心配してたわよ」
レンは気を付けて帰って来るよう伝え、携帯をポケットに入れた。
レンの心は今、完全に冷え切っていた。
レンは自分に対しても、未希子に対しても怒り狂っていた。
なぜ話を聞こうとしないっ!
レンには理解できなかった。そして、何とかなるだろうとこの状態を3週間も放置していた自分に猛烈に腹を立てていた。
12時に迎えが来る予定だったが、今はまだ11時を過ぎたところ。携帯で送迎の時間と場所変更をした後、なんとか冷静に考えようと試みたが、怒り以外何も込み上げてはこなかった。
未希子は人の話も聞かない、ただの分からず屋だ。
そう考えると、少し気分がよくなった。
自分だけが悪かったのだろうか。
そんなわけはない。端から聞こうとしない未希子が悪いし、自分勝手に結論付ける彼女の態度に頭が来た。未希子が言っていた通り、1週間後には自分にぴったりの女性に会えるかもしれない。この3週間未希子に恋い焦がれ、思いを募らせていた自分をばかばかしく感じた。
ちょうどその時携帯が鳴り、レンが今一番話したくない相手の名前が表記された。
「・・・もしもし」
「もしもし、レンや?一体今どこにいるの?」
「・・・昨日日本に帰ってきました」
「私からの連絡を全部はぐらかして、何も言わずに帰国するなんてひどいじゃないの!」
「すみません。ナイナイ、今は話す気分じゃないんです」
「どうしたの?・・・未希子さんに会えなかったの?」
「会いましたよ。でも、もう二度と会うことはないと思います」
「?!・・・どういうことなの?」
「どういうことかは彼女に聞いてください。とにかくそのことについて話したくないんです」
「・・・何を言って・・・」
「正直、今はもうどうでもいいです」
レンは投げやりに答えた。
「そんな簡単に気持ちを切り替えられるはずないでしょうに」
レンは歯噛みしそうになった。
祖母がレンを思って言っていることは十分にわかっている。ただし今はその言葉を聞きたくない。気まずい空気が携帯越しに伝わってきた。
「全ては終わったことです。ナイナイの思うように事が運ばなかったことを許してください」
レンはこの話は終わりだというように、シンガポールでのファッションショーについて聞いた。
「とってもよかったわよ。また何着か購入してしまったの。向こうが商売上手なのか、私が買い物好きなのかはわからないけど」
「ナイナイが楽しんでいるようでよかったです」
「でも、今日帰るわ。そして、何が起きているのか私がはっきりさせます」
「ナイナイ・・・・」
「思い合っている二人がこんなことになるなんて、おかしいもの」
「・・・・・ナイナイ。はっきり言いたくはないんですが、自分は振られたんです。そして、自分は前に進むことにしたんです。正直今回のプロジェクトを終えた後、真剣に見合いを考えようとも思っています」
「レン?!そんなバカな話はないわ」
「女性は彼女だけじゃありませんし、彼女が・・・自分たちは合わないとはっきり言っているんです」
「そんなはずはありません!」
レンは立ち止まって、目を閉じた。
音を立てないように深く深呼吸をし、できるだけ落ち着いた声で携帯の向こうにいる人物に話しかけた。
「ナイナイ。もう一度だけ言います。二度と彼女の名前を自分の前で言わないでください。特に今は聞きたくないんです」
優美はレンの声色を聞いて息を吞んだ。
「・・・とにかく今日帰るわ。無理しないでちょうだい。秘書さんが心配してたわよ」
レンは気を付けて帰って来るよう伝え、携帯をポケットに入れた。
レンの心は今、完全に冷え切っていた。