シンガポール・スリング
ちょっと唇を尖らせて、ふてくされたように言う未希子を見て、ここまで慎重に話していたレンの理性はあっけなく吹き飛んだ。
未希子の唇に噛みつくようにキスをし、全身で自分の思いをぶつけた。
柔らかい未希子の唇が思っていた以上に官能的でクラクラする。
何度も角度を変えて未希子の唇をむさぼるほど、初めはひんやりとしていた唇が熱を持ち始め、それに呼応するように、レンの体もどんどん熱くなっていった。
セックスは嫌いじゃない。
しかし、女とベッドインがなくてもレンの生活に支障をきたすことはなかった。
でも今この瞬間、彼女を自分のものにできなかったらどうなるかわからないほど、レンは未希子を渇望していた。
少し顔を上げると、ふっくらとした唇の周りがピンク色に染まり、完全に体をレンに預けている。
「・・・すまない」
「どうして謝るんですか?」
「なんとなく・・・優しくするべきなのに」
「・・・?それは私にそういう経験がないからですか?」
「・・・・・・」
「経験がないと・・・レンさんは嫌?」
「違うっ!」
そうじゃない。
何を言いたいのかも自分でよくわからない。
ただ、未希子の初めてはもっと・・・優しくあるべきだ。
大樹だったら・・・。
突然甘いマスクの上村の顔を思い出し、急いで消し去った。
レンさん?小さい声で未希子はレンを呼ぶと目を合わせた。
「私は付き合ったことも、そういうことをしたことも一度もないんです。だからなにがいいのか、悪いのかなんて全然わかりません」
だから・・・未希子は赤くなりながら両手をレンの胸板にそっと置いた。
「今まで通りにしてください」
「!?」
「だって、経験がないからって変に気を使って・・・」
「そんなことはない」
未希子には悪いが・・・と前置きして、未希子の額に自分の額を当てた。
「未希子を前にして今まで通りなんて無理だし、理性が吹っ飛んで自分でも制御しようがない」
申し訳なさそうに笑いながら、流れるような髪を耳にかけた指が震える。
「すまない。もうどうしても耐えられない」