シンガポール・スリング
うわぁ・・・すげぇ・・・
瀬尾はわけもなく感激していた。
「未希子さん。お相手のレンさんってめちゃくちゃカッコいいですね!!顔はもちろんですけど、何ですかあれ。色気ただ漏れじゃないですか。あれは落ちるわ」
「瀬尾君・・・キミって案外鈍感なんだね」
上村はあきれたようにつぶやく。
「??どういう意味です?」
「わかってないようだから教えてあげるけど、あれはレンからの宣戦布告。イエローカードを突きつけられたってわけ。気づかなかった?」
「は!?気づくわけないじゃないですかっっ!!」
イエローカードとか言って脅さないでくださいよ。
オレ、何もしてないんですけど。
上村は瀬尾をちらっと見ると大げさに息を吐き、若いっていいよね。怖いものなしでさ・・・とつぶやいた。
「いやいや。マジでそうやって脅すのやめてくれます?」
「今度来た時に殺されないようにね」
「・・・・・恐ろしいこと言わないでくださいよ」
「レンのこと知らないでしょ?俺、高校からの付き合いだからさ。怒らせた時、めちゃくちゃ怖いんだから」
「だから、そうやって恐怖を煽り立てるのは辞めてくださいって」
瀬尾は縋りつくように上村の腕を掴む。が、上村の二の腕が思ったよりがっしりしていたのに驚いたのか、パッと手を離した。
「大樹先生・・・めちゃくちゃ鍛えてますね。着やせするタイプです?」
「医者って体力勝負だからね。レンなんかもっとすごいよ。ね?未希子ちゃん」
「・・・・・」
「ねぇ、未希子ちゃん」
「・・・・・」
「みぃーきぃーこーちゃーーん」
「大樹先生・・・」
「ん?」
―――今晩、殺されないといいですね。
未希子はにっこり笑うと、いつものように布フィルターをセットし始めた。