不器用主人の心は娘のもの
初めての…
その日の朝、彼は気持ちが落ち着かないまま、何とか仕事をこなしていた。
食事を摂り終えると、そわそわとしたまま支度をし、娘の元へと向かった。
執事姿の自分の膝に座らせて食事をさせている娘を、彼はぼんやりしたまま見つめる。
(早く笑ってみせてくれ…)
彼は彼女のことで頭が一杯になっていた。
娘は食事を終え水を飲み、ほんの一息。
彼は突然、吸い寄せるように自分の膝にいる彼女の顎を、白手袋をした手で自らに引き寄せる。
そして目をそっと閉じ、その唇に自らの唇を重ねた。
「…!!」
彼女は目を丸く見開いたまま。
自分でも何をしたのか分からない。
彼はとうとう、執事の姿で彼女に口付けてしまったのだった。
「…テイル…様…?」
彼女が呟くような小さな掠れ声で彼に問いかける。
もうどうにか成りそうだった。
彼はすぐに膝の上の彼女をそばに下ろして立ち上がり、早々に部屋を出ていった。
先ほど娘に触れたばかりの唇は熱く、白手袋をしたままの片手で押さえてもまだ感触が残っているよう。
本当に何ということをしたのか。
今の自分は『屋敷の執事長』。彼女は買われてきた『屋敷の主人』のもの。
両方自分であったとしても、『執事長』と『主人』では立場が違う。
おまけに彼女の気持ちを無視し、執事の姿でしてしまったのだ。
今まで何人もの者たちが彼に言い寄ってきたが、自ら口付けたのは初めてだった。
(…こんなことは今までなかった…私は一体なぜ…)
彼は一人自室で混乱し頭を抱えたまま、珍しく仕事に追われて一日を過ごした。
食事を摂り終えると、そわそわとしたまま支度をし、娘の元へと向かった。
執事姿の自分の膝に座らせて食事をさせている娘を、彼はぼんやりしたまま見つめる。
(早く笑ってみせてくれ…)
彼は彼女のことで頭が一杯になっていた。
娘は食事を終え水を飲み、ほんの一息。
彼は突然、吸い寄せるように自分の膝にいる彼女の顎を、白手袋をした手で自らに引き寄せる。
そして目をそっと閉じ、その唇に自らの唇を重ねた。
「…!!」
彼女は目を丸く見開いたまま。
自分でも何をしたのか分からない。
彼はとうとう、執事の姿で彼女に口付けてしまったのだった。
「…テイル…様…?」
彼女が呟くような小さな掠れ声で彼に問いかける。
もうどうにか成りそうだった。
彼はすぐに膝の上の彼女をそばに下ろして立ち上がり、早々に部屋を出ていった。
先ほど娘に触れたばかりの唇は熱く、白手袋をしたままの片手で押さえてもまだ感触が残っているよう。
本当に何ということをしたのか。
今の自分は『屋敷の執事長』。彼女は買われてきた『屋敷の主人』のもの。
両方自分であったとしても、『執事長』と『主人』では立場が違う。
おまけに彼女の気持ちを無視し、執事の姿でしてしまったのだ。
今まで何人もの者たちが彼に言い寄ってきたが、自ら口付けたのは初めてだった。
(…こんなことは今までなかった…私は一体なぜ…)
彼は一人自室で混乱し頭を抱えたまま、珍しく仕事に追われて一日を過ごした。