不器用主人の心は娘のもの
ぬいぐるみは彼女にとって『執事長』が贈ったもの。
彼女はこれを贈った『執事長』のために、『主人』である自分に身を捧げている。
そう考えただけで胸が張り裂けそうになった。
ぬいぐるみを寝そべらせた娘の頬に押し付け、仮面の奥で怒りに顔を歪ませる。
「ど、どうか…御主人様…!!」
泣き出したことにも構わず、彼女の身体のタオルを乱暴にはだける。
「ち、違…っ…ご、ごしゅじ…さまぁ…っ…!!」
娘は必死にぬいぐるみから顔を背け、抵抗もせず彼のなされるがままだった。
「み、見ないでっ…!!見ないでリュカぁ…!!」
…今なんと言った?
聞き覚えの無い、屋敷の誰でもない名前。
「…リュカ…?」
彼は動きを止め、彼女と、その濡れた視線の先にあるぬいぐるみを見る。
「リュカ…見、ない、で…お願…」
泣きながらぬいぐるみにそう請う彼女。
そのぬいぐるみは、彼女にとって贈った際に自分が言った通り『仲間』、もしくは『友』だったのかもしれない。
どちらの姿だったにしろ、彼女は贈られたぬいぐるみに名までつけ『彼』の言ったことを守り大切にしていた。
しかしあろうことか自分は、『執事長』という自分自身に嫉妬をしてしまったのだ。
「…お前は…『大切にする』…と…。そうか…」
次第に怒りの熱は冷め、落ち着きを取り戻す。
彼女は夜の自身の姿を、大切にしていた『リュカ』に見られたくはなかった。だからあんなに泣いていたのだろう。
(それなのに私は…)
そっと彼女から身体を離す。
「…悪かった…」
彼はこれ以上もう何も言えず部屋を出ていった。
彼女はこれを贈った『執事長』のために、『主人』である自分に身を捧げている。
そう考えただけで胸が張り裂けそうになった。
ぬいぐるみを寝そべらせた娘の頬に押し付け、仮面の奥で怒りに顔を歪ませる。
「ど、どうか…御主人様…!!」
泣き出したことにも構わず、彼女の身体のタオルを乱暴にはだける。
「ち、違…っ…ご、ごしゅじ…さまぁ…っ…!!」
娘は必死にぬいぐるみから顔を背け、抵抗もせず彼のなされるがままだった。
「み、見ないでっ…!!見ないでリュカぁ…!!」
…今なんと言った?
聞き覚えの無い、屋敷の誰でもない名前。
「…リュカ…?」
彼は動きを止め、彼女と、その濡れた視線の先にあるぬいぐるみを見る。
「リュカ…見、ない、で…お願…」
泣きながらぬいぐるみにそう請う彼女。
そのぬいぐるみは、彼女にとって贈った際に自分が言った通り『仲間』、もしくは『友』だったのかもしれない。
どちらの姿だったにしろ、彼女は贈られたぬいぐるみに名までつけ『彼』の言ったことを守り大切にしていた。
しかしあろうことか自分は、『執事長』という自分自身に嫉妬をしてしまったのだ。
「…お前は…『大切にする』…と…。そうか…」
次第に怒りの熱は冷め、落ち着きを取り戻す。
彼女は夜の自身の姿を、大切にしていた『リュカ』に見られたくはなかった。だからあんなに泣いていたのだろう。
(それなのに私は…)
そっと彼女から身体を離す。
「…悪かった…」
彼はこれ以上もう何も言えず部屋を出ていった。