不器用主人の心は娘のもの
朝にやってきた『主人』
朝になった。
もう丸二日は主人の姿で娘に会っていない。
もう一度だけ『主人』として娘に会ってみたいと思った。
優しい『テイル』のようにすれば、もしかしたら主人の姿でも、娘が慣れてくれるかもしれない…
彼は湯を浴び『主人』の姿のまま、小さく淡い期待を抱いたまま娘の部屋へ向かった。
彼が部屋の戸を開くと、娘はすぐに顔をこわばらせ後ずさる。
あとから入ってきたコリーンも主人の顔を見て驚き、娘はコリーンの後ろにそっとついた。
「…御主人様、ご機嫌麗しゅう」
コリーンがそう挨拶をすると娘も続く。
「おはようございます、御主人様…」
娘は主人に怯えているらしく震えていた。
その姿に悲しみが再び込み上げてきても、彼は面に乗り移られたように主人らしく命ずる。
「…娘は本日、私のそばで食事だ。準備を」
「…!」
娘は息を呑む。
しばらく振りなうえ、今まで一度も朝に姿を現すことのなかった主人。
その主人がまさか、いつもテイルとともにしていた自分の食事時間にやってくるなど娘には考えもしなかったのだろう。
「…御主人様」
しばらくの沈黙ののち、コリーンが言う。
「…何か、この娘に不手際がありましたでしょうか?躾がなっていなかったとの事でしたら、このわたくしに罰を。わたくしはこの『子犬』の世話係ですから」
そう、『主人』にとって娘は子犬。
自らがそう最初に言ったのだ。
一度も朝に姿を見せなかった『主人』が来るということは、普通、何か問題があった時。
コリーンはもちろん言わないが、暗に『今さらなぜ主人の姿で娘の前にやってきたのか』と言いたいに違いない。
「っ…」
息を呑み黙り込む彼にコリーンは続ける。
「この娘が懐かないのであれば、御主人様に近づけておく訳にはまいりませんもの。わたくしのそばで娘を、御主人様に懐くまで引き離して躾をし直さなければなりません」
その言葉には『その姿で娘に優しくすることが出来ないのなら出ていってほしい』、そんなコリーンの想いが見て取れる。
もう丸二日は主人の姿で娘に会っていない。
もう一度だけ『主人』として娘に会ってみたいと思った。
優しい『テイル』のようにすれば、もしかしたら主人の姿でも、娘が慣れてくれるかもしれない…
彼は湯を浴び『主人』の姿のまま、小さく淡い期待を抱いたまま娘の部屋へ向かった。
彼が部屋の戸を開くと、娘はすぐに顔をこわばらせ後ずさる。
あとから入ってきたコリーンも主人の顔を見て驚き、娘はコリーンの後ろにそっとついた。
「…御主人様、ご機嫌麗しゅう」
コリーンがそう挨拶をすると娘も続く。
「おはようございます、御主人様…」
娘は主人に怯えているらしく震えていた。
その姿に悲しみが再び込み上げてきても、彼は面に乗り移られたように主人らしく命ずる。
「…娘は本日、私のそばで食事だ。準備を」
「…!」
娘は息を呑む。
しばらく振りなうえ、今まで一度も朝に姿を現すことのなかった主人。
その主人がまさか、いつもテイルとともにしていた自分の食事時間にやってくるなど娘には考えもしなかったのだろう。
「…御主人様」
しばらくの沈黙ののち、コリーンが言う。
「…何か、この娘に不手際がありましたでしょうか?躾がなっていなかったとの事でしたら、このわたくしに罰を。わたくしはこの『子犬』の世話係ですから」
そう、『主人』にとって娘は子犬。
自らがそう最初に言ったのだ。
一度も朝に姿を見せなかった『主人』が来るということは、普通、何か問題があった時。
コリーンはもちろん言わないが、暗に『今さらなぜ主人の姿で娘の前にやってきたのか』と言いたいに違いない。
「っ…」
息を呑み黙り込む彼にコリーンは続ける。
「この娘が懐かないのであれば、御主人様に近づけておく訳にはまいりませんもの。わたくしのそばで娘を、御主人様に懐くまで引き離して躾をし直さなければなりません」
その言葉には『その姿で娘に優しくすることが出来ないのなら出ていってほしい』、そんなコリーンの想いが見て取れる。