不器用主人の心は娘のもの
彼女からはまだ、仮面を着けた『主人』の姿しか見えない。呆然とこちらを見つめていた目はすぐに逸らされ、視線はそのままあちらこちらに散った。
抱きしめられていたはずの主人から、なぜテイルの声が聞こえたのかが分からずかなり混乱をしているせいだろう。
「…エイミ…」
いつも通りのくぐもる低い声で、主人に教えてもいない彼女の名を呼ぶ。
そして彼は一瞬ためらうも、エイミの目の前で自身の仮面を外した。
「!!」
エイミは絶句する。
視線も縫い付けられたようにこちらを見たままで、必死に状況を理解しようとしているらしい。
「…なぜもっと早く分からない…?私が主人だ…お前を買ったのも、お前を奪ったのも…」
彼は未だ呆然とする彼女を前に、必死に告げる。
「…。」
「どんなにお前が欲しかったことか…。屋敷の者たちは知っているようだが、黙っているだけだ…私が主人であることを…」
エイミは首を横に振り始め、それは次第に激しくなる。
「…い、嫌…嫌あぁぁぁ!!」
そしてパニックを起こしたように叫び、強く身体を揺らした。
「エイミ…!」
彼は縄で傷付き始めたエイミの手を急いで外し、その腕を動かさないよう手で押さえた。
恐れていたことが起こってしまった。
彼は冷たく当たろうと決めていたことも忘れ、必死にエイミを落ち着かせようと優しく声を掛ける。
「お願いだ…手が傷ついてしまう…!エイミ、私が憎いか…?どうしたら、今までのことをお前に償える…?」
しかし彼女は止まらなかった。
「嫌ぁ……!!聞きたく、ありません…!!もう、もう何も…!!」
泣きながら激しく抵抗を続けるエイミ。
…もう自分はそばにいてはいけない。
彼女が落ち着きを取り戻したら、バラドに言って馬車で彼女を家に送り返すだけ。
自分に出来ることは他にもうないのだから…
彼は抵抗するエイミの腕を出来るだけ優しく縄で縛り直してベッド柵に固定し、面を着け直して部屋を出ていった。
抱きしめられていたはずの主人から、なぜテイルの声が聞こえたのかが分からずかなり混乱をしているせいだろう。
「…エイミ…」
いつも通りのくぐもる低い声で、主人に教えてもいない彼女の名を呼ぶ。
そして彼は一瞬ためらうも、エイミの目の前で自身の仮面を外した。
「!!」
エイミは絶句する。
視線も縫い付けられたようにこちらを見たままで、必死に状況を理解しようとしているらしい。
「…なぜもっと早く分からない…?私が主人だ…お前を買ったのも、お前を奪ったのも…」
彼は未だ呆然とする彼女を前に、必死に告げる。
「…。」
「どんなにお前が欲しかったことか…。屋敷の者たちは知っているようだが、黙っているだけだ…私が主人であることを…」
エイミは首を横に振り始め、それは次第に激しくなる。
「…い、嫌…嫌あぁぁぁ!!」
そしてパニックを起こしたように叫び、強く身体を揺らした。
「エイミ…!」
彼は縄で傷付き始めたエイミの手を急いで外し、その腕を動かさないよう手で押さえた。
恐れていたことが起こってしまった。
彼は冷たく当たろうと決めていたことも忘れ、必死にエイミを落ち着かせようと優しく声を掛ける。
「お願いだ…手が傷ついてしまう…!エイミ、私が憎いか…?どうしたら、今までのことをお前に償える…?」
しかし彼女は止まらなかった。
「嫌ぁ……!!聞きたく、ありません…!!もう、もう何も…!!」
泣きながら激しく抵抗を続けるエイミ。
…もう自分はそばにいてはいけない。
彼女が落ち着きを取り戻したら、バラドに言って馬車で彼女を家に送り返すだけ。
自分に出来ることは他にもうないのだから…
彼は抵抗するエイミの腕を出来るだけ優しく縄で縛り直してベッド柵に固定し、面を着け直して部屋を出ていった。