不器用主人の心は娘のもの
エピローグ 〜愛する君に口付けを〜
エイミは『主人』専属のメイドとなった。
夜は『主人』姿の彼と過ごし、昼はコリーンといることもあるが『執事』姿の彼に連れられて彼の仕事を見に行ったりすることも。
そんなある日。
彼はエイミとの時間をもう少し取りたいと、古くからいるメイドの孫を新しいメイドとして迎え入れることになった。
主人には似つかわしくない小さな部屋に皆で集まり、新人の紹介が始まった。
「はじめまして御主人様、そして皆さん。どうぞこれからよろしくお願いいたします…」
冷酷と噂の主人の前もあり、新人のメイドはとても緊張した様子で屋敷の皆の前で頭を下げる。
皆の挨拶の中、『主人』姿の彼は黙り込み、椅子に掛けたままその様子を見ていた。
皆の挨拶が終わり、最後はコリーンとエイミ。
「コリーンよ。あなたの先輩になるわ、よろしくね。そして…」
コリーンがそう挨拶のあとにエイミを紹介しようとすると、彼はゆっくりと立ち上がり、エイミを後ろから抱きしめた。
「え…!?」
驚くエイミや周りの者たちをよそに、彼は告げる。
「…彼女はエイミ。コリーンの妹であり、私の専属だ」
「え、えっと…よろしくお願いします、エイミです…」
エイミは恥ずかしそうにはにかみ、彼に抱きしめられたまま新人の彼女に挨拶をする。
「は、はい、よろしくお願いいたします、コリーン先輩、エイミ先輩…」
何も知らない新人メイドはうろたえるままそう挨拶を返すと、周りをそっと見渡した。
「…それからその…このお屋敷にいらっしゃるという、『執事長』様にご挨拶をさせていただきたいのですが…」
「『テイル』様は今朝はいらっしゃらない。それから、夜はいつも不在だ」
バラドがすかさずいつもの無表情でそう告げる。
コリーンはふふっと口に手を当てて笑い、屋敷の者たちも穏やかに笑った。
新人メイドは皆の様子に首を傾げるが、やがて頭を下げ、コリーンに連れられ皆とともに部屋を出ていった。
「…御主人様?私、変に思われなかったでしょうか…?」
皆がいなくなると、エイミが小さな声で彼に切り出す。
「構わないだろう、屋敷にいればじきに分かることだ。お前ほど、素直で鈍感な娘でなければ、な?」
彼はエイミを抱き寄せてそう言うと、自らの仮面を外しそっとその唇に口付けた。
穏やかな笑顔の、このまっすぐな彼女のように自分もなれたらと、心から思いながら……
《終》
夜は『主人』姿の彼と過ごし、昼はコリーンといることもあるが『執事』姿の彼に連れられて彼の仕事を見に行ったりすることも。
そんなある日。
彼はエイミとの時間をもう少し取りたいと、古くからいるメイドの孫を新しいメイドとして迎え入れることになった。
主人には似つかわしくない小さな部屋に皆で集まり、新人の紹介が始まった。
「はじめまして御主人様、そして皆さん。どうぞこれからよろしくお願いいたします…」
冷酷と噂の主人の前もあり、新人のメイドはとても緊張した様子で屋敷の皆の前で頭を下げる。
皆の挨拶の中、『主人』姿の彼は黙り込み、椅子に掛けたままその様子を見ていた。
皆の挨拶が終わり、最後はコリーンとエイミ。
「コリーンよ。あなたの先輩になるわ、よろしくね。そして…」
コリーンがそう挨拶のあとにエイミを紹介しようとすると、彼はゆっくりと立ち上がり、エイミを後ろから抱きしめた。
「え…!?」
驚くエイミや周りの者たちをよそに、彼は告げる。
「…彼女はエイミ。コリーンの妹であり、私の専属だ」
「え、えっと…よろしくお願いします、エイミです…」
エイミは恥ずかしそうにはにかみ、彼に抱きしめられたまま新人の彼女に挨拶をする。
「は、はい、よろしくお願いいたします、コリーン先輩、エイミ先輩…」
何も知らない新人メイドはうろたえるままそう挨拶を返すと、周りをそっと見渡した。
「…それからその…このお屋敷にいらっしゃるという、『執事長』様にご挨拶をさせていただきたいのですが…」
「『テイル』様は今朝はいらっしゃらない。それから、夜はいつも不在だ」
バラドがすかさずいつもの無表情でそう告げる。
コリーンはふふっと口に手を当てて笑い、屋敷の者たちも穏やかに笑った。
新人メイドは皆の様子に首を傾げるが、やがて頭を下げ、コリーンに連れられ皆とともに部屋を出ていった。
「…御主人様?私、変に思われなかったでしょうか…?」
皆がいなくなると、エイミが小さな声で彼に切り出す。
「構わないだろう、屋敷にいればじきに分かることだ。お前ほど、素直で鈍感な娘でなければ、な?」
彼はエイミを抱き寄せてそう言うと、自らの仮面を外しそっとその唇に口付けた。
穏やかな笑顔の、このまっすぐな彼女のように自分もなれたらと、心から思いながら……
《終》