婚約解消しないと出られない部屋
ジルフリート様は変態なのだろうか。
まだ本当かどうか疑っているけれども、今ジルフリート様の言ったことが本当なら。
嬉しくて嬉しくて、舞い上がるようなので、変態かどうかはちょっとよく分からないわ!?
「――あっ、でも確かに、変態かも……」
「ぐはッ!?」
はっ、思ったことが口からこぼれ出ていた!
ジルフリート様が流れ弾を受けて死にそうな顔をしている!
「オ、オ、オレリアはやはり、変態な俺ではだめなのか!?」
「だ、だめというか……。!?」
気がつくとジルフリート様が私の目の前まで距離を詰めていた。
どうやら、素直な気持ちを吐露したジルフリート様は、彼を柱にぐるぐる巻きにしていた鎖から解放されたらしい。
「オレリア頼む、俺を捨てないでくれー!」
そう叫ぶと、ジルフリート様は私に抱きついてきた。
えええ、どうしてそうなったの!?
でもあの、だめよ、今は――!
「アーッ!?」
「きゃああ、ジルフリート様ぁー!!」
鎖からは解放されたものの、手錠を解除しないまま私に抱きついたジルフリート様は、ものの見事に手錠の電撃を浴びていた。
悲壮な叫び声と共に、ジルフリート様は床に崩れ落ちる。
私が慌てて手錠の鍵を開けようとその手を取ると、さらに電撃が走って、ジルフリート様が「ア゛ア゛ッ!?」と痛ましい声をあげた。その体はビクンビクンと跳ねている。
……助けようとしたのに、死体に鞭打つような酷いことになってしまったわ! なんて不幸な事故なの!?
私は、やってしまったことに震える手を叱咤しながら、まだビクンビクンしているジルフリート様(大丈夫なの!?)に触れないように、スカートを使ってうまく手錠を持ち上げ、鍵穴にそっと鍵を差し込む。
すると、手錠は鎖と違って蒸発せずに、鍵が外れた後、カシャンと音を立てて床に落ちた。
「ジルフリート様、大丈夫ですか!?」
「目の前に天使が見える……天使様、次はオレリアの靴下に生まれ変わりたいです……」
「急に何を言っていらっしゃいますの!?」
天使と呼ばれた挙句、謎の懺悔をされた私は、もう恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがない。
そして、助け起こそうと必死に肩から彼を持ち上げていたところだったので、恥ずかしさのあまり力が入らなくなった私は、そのまま彼を床に落としてしまった。
頭から石の床に落とされたジルフリート様は、「ア゛ーッ!?」と悲痛な叫び声をあげている。
本当に、なんて不幸な事故なの!!!
「ジルフリート様、動けますか。せめてあの寝台まで行きましょう」
「オレリアが頭を撫でてくれないと、動けない……」
「頭でも打ちましたか!?」
「頭を打ったんだよ」
そう言われてしまうと、犯人の私は従うしかない。
「よ、よしよし……」と言いながら、オーダーどおりにジルフリート様の頭を撫でた。
先程の電撃でウニみたいに爆発しているものの、いつもどおりさらっさらの髪だ。もちろん触れるのは初めて。ドキドキする。
すると、急に彼がウニ頭のまま立ち上がったので、私は驚きのあまり目を白黒させた。
「オレリア、男と二人きりの部屋でなんて甘い声を出すんだ!」
「ええ!? ジルフリート様が撫でろって……」
「こんな素晴らしいオプションがつくとは思っていなかったんだ。もう俺は今すぐ死んでもいい。いや死んではいけない、もっとオレリアと………………ん?」
なんだか急に元気な様子のジルフリート様が、急に動きを止めた。
やはり、電撃を浴びすぎて、ジルフリート様はだいぶ混乱しているらしい。挙動がだいぶ不審である。
「ジルフリート様、どうされました」
「二人きりだな」
「はい」
「今、ここには俺達だけ?」
「……はい」
「そして扉もあかない? そこには寝台?」
…………。