婚約解消しないと出られない部屋
3−2 素直になれば上手くいくと思っていた? 残念!
映像が途絶えた。
残されたのは、呆然とする私と、ジルフリート様だけだった。
(こんなの…………こんなの、急すぎるわ……)
もうだめだ。
婚約解消は確定だ。
だって、今ここでジルフリート様が私との婚約を解消したいと言うだけで話は終わるのだ。
私だって、いつか振られると思っていたけど、こんな、振られる5秒前みたいに、ドッキリ大作戦を仕組むことないじゃないか。
ちょっとくらい、心の準備をさせてくれても、よかったんじゃないのか……。
じんわり涙が浮かび上がってくる。
いけない、ジルフリート様に見られてしまう……。
「……君は、言わないのか」
ぽつりと呟かれた言葉に、なんのことだろうとジルフリート様を見上げる。
「俺との婚約を………………したい、と言えば、すぐにでも」
「ジルフリート様こそ」
言わないのか、と涙目で問うと、ジルフリート様はまた私から目を逸らした。あぅ……。
(私が婚約解消したいなんて、言う訳ない。言える訳がない。でも、その理由も言えない!!!!)
どうするどうするどうする。
悩んでいるうちに、時間ばかりが過ぎていく。
……でも、あれ?
ジルフリート様も、何か悩んでいる様子で……発言がない?
「ジルフリート様?」
「何だ」
機嫌の悪さが滲み出た低い声。うわぁ大好き!
でも、話しかけて機嫌が悪そうにされたのだと思うと泣きそうである。私の心臓は忙しい。
「……ジ、ジルフリート様こそ、すぐに、私との婚約を………………………ゴニョゴニョ…したいって言わないなんて、わ、わ、わ、私との婚約を解消したくないみたいですわね!?」
「ブーメランで血だらけだぞ、オレリア。君こそすぐに言わないなんて、俺との婚約を続けたいみたいだ」
「わ、私はちょっと事情があって」
「お、俺だってそうだ」
私は、言えることがなくなって黙ってしまう。
ジルフリート様も、そのまま黙りこくってしまった。
壁にかけられた時計を見ると、すでに10分を経過している。
まずい、このままだとジルフリート様との婚約が解消されてしまう。
こうなったら、素直になって……。
…………ん?
(よく考えたら、素直になっても婚約継続されませんわ!?)