婚約解消しないと出られない部屋
3−4 弟は兄に攻撃を繰り出した。効果は絶大だ!
「私オレリアは、ジルフリート様との婚約を、解し――」
『『「待ったー!!!」』』
大音量の待ったに、私は目をぱちくりと瞬く。
「……あの」
聞き間違いでなければ、その待ったにジルフリート様の声も混ざっていたような気がする。
「……いや、別に、俺は何でも……いや、でもその」
やはり聞き間違いだったようだ。
それはそうだ。だって、ジルフリート様は、私のことを好きなはずはないのだから。
『兄さんのばか! オレリアさんを泣かして、それでもまだ意地を張るのかよ!』
「えっ、オレリア、やっぱり泣いて……?」
「泣いてません!」
「な、泣いてないそうだ!? そ、それに俺は意地なんて張っていない!」
『はあ!? 馬鹿じゃないの、このへそ曲がり野郎!』
『姉さんも何言ってるのよ! いつもあれだけ拗らせてるのに急にあっさり身を引くなんて、このあまのじゃく女!』
「…………拗らせ……?」
「アアアアアリアーヌったら何を言い出すのかしらね、ホホホホ……」
あわわ、アリアーヌは一体何を言い出すのだ。
『いいでしょう。二人がそういうつもりなら、私達にも考えがあります』
『まずは兄さんからだね。くらえ!』
くらえ?
セドリックのその言葉とともに、映像が切り替わって、なんだか小洒落た演出のタイトルが現れた。
――あなたの知らない彼の世界♡ 〜へそ曲がりな氷の王子の裏側へご案内〜 ……?
「――待て!! 一体何をする気だ!!」
真っ青になったジルフリート様が、ガチャガチャと音を立てながら鎖を引きちぎろうと暴れている。
氷の王子とは、きっと彼のことよね。
なんだろう、そんなに慌てることがあるのだろうか。
そう思っていると、なんだかとある部屋の様子が映し出された。
――私の肖像画だらけの部屋だった。
「……え?」