婚約解消しないと出られない部屋
3−5 妹は姉に攻撃を繰り出した。効果は絶大だ!
おそらく全く冷静でない私は、オロオロと映像とジルフリート様を交互に見る。
『姉さん、言葉もないのね。分かるわ、ジルフリート様って変態よね』
「ぐはっ!?」
『まあ姉さんも十分変態だから大丈夫よね?』
「え!? ちょちょ、ちょっと待ってよ、アリアーヌ。何を言い出すの!?」
『片方だけだとずるいでしょ? さ、次に行きましょ、次ー!』
「待って、やめて! だ、だ、誰かこの映像を止めて!?」
慌てふためく私の様子に、項垂れていたジルフリート様も驚いてこちらを見ている。
そして思ったとおり、映像が切り替わった。
――あなたの知らない彼女の世界♡ 〜あまのじゃくな深層の令嬢の裏側へご案内〜
「あまのじゃく……?」
「や、やめてよアリアーヌ! 本当にやめて、嫌な予感しかしないわ!?」
ガチャガチャを音を立てながら、必死に鎖を引きちぎろうと動くけれども、鎖が外れる様子はない。なんなの、すごく丈夫な鎖ね!?
そして、私の抵抗を嘲笑うかの如く、映像は次のステップへと進んでしまう。
【オレリアお姉様、今日もまたジルフリート様に酷いことを言って……一体何が気に食わないのよ】
【気に食わないことなんてある訳ないでしょう!? ジル様は見た目も中身も美しい天使なのよ? いつか天に帰ってしまうかもしれないと思うと身動きが取れなくなるのは仕方ないことよ】
【……じゃあ、せっかく珍しくお家に誘ってくれたのに、なんで他の女を誘えとか言うのよ】
【こ、この間のお茶会で、ジルフリート様が沢山女性に話しかけられていて……楽しそうだったし……私なんかがジルフリート様のお家に行くなんて……】
【いや、弟のセドリック様に誘われたらいつも行くでしょう。行き先は同じなのに、ジルフリート様に誘われたときだけ、なんで断るのよ】
【……だって……………………】
【だって?】
【ジル様に誘われたと思ったら!! 嬉しすぎて心臓が爆発しそうになるから!? 生命の危機を避けようと思ったら、気がついたら断ってたのよおおおお】
「いやぁあああああああ全部嘘ですうぅうううう」
最後の抵抗に全部嘘だったことにしようと、私は変な叫び声をあげる。
そして、床に正座して蹲って、泣いた。
もうだめだ、ジルフリート様の中で、私はただの変質者だ。
『ジルフリート様、よく聞きましたぁ? もうね、姉さんったら、うちの家族に毎日毎日毎日毎日ジルフリート様が如何に素敵かって長時間垂れ流してうるさくて』
「そ、そう、なのか……?」
『そうなんです! こんなあまのじゃくな変態は、他の一般人に嫁がせたら、その方に迷惑がかかりますわ! 是非とも受け入れてやってください。今もそっと肩を抱き寄せたりしたら泣くほど喜ぶと思いますよ!』
「やめてぇ…………もう私を殺して…………」
「オ、オレリア早まるんじゃない!?」
ジルフリート様、またしても舌の根も乾かぬうちに!