婚約解消しないと出られない部屋

3−6 好きになってごめんなさい




 そんなぐちゃぐちゃな私達を見たアリアーヌとセドリックは、満足そうな顔をして宣った。


『じゃあ、あとは若いお二人でよろしくね。姉さんファイトぉ!』
『ちゃんと素直な気持ちを伝えるんだよ! 兄さん、健闘を祈る!』

 ――プチっ。

 映像が切れると、そこには水を打ったような静けさがあった。

 私は蹲ったまま、もう動けなかった。
 絶命したい。全てを終わらせたい。誰かこのまま私を殺してほしい。

「――オレリア」

 ジルフリート様の声が聞こえる。
 でも、私は蹲ったまま、動かなかった。

「オレリアは、俺のことを好きなのか」

 ジルフリート様の声が震えていたような気がするけれども、きっと気のせいだろう。

 そんなことより、とうとうバレた。バレてしまった。私がこんな重たい想いを抱えた女だと言うことがバレてしまった。

 そして、私は気がついているのだ。
 これは仕組まれた罠だ。
 ……そうだ、ちゃんと気がついていることをジルフリート様に伝えなければ。

 顔を上げることもなく蹲ったまま、私は涙で枯れた声で、ジルフリート様に話しかけた。

「ジルフリート様。私、ちゃんと分かってるんです」
「……な、何が」
「ジルフリート様は、私のことなんか、別に好きじゃない……」
「――どうしてそうなった!?」

 その激しい声に不思議に思いながら、私はもうなんでもいいやと蹲ったまま、呟くように続ける。

「さっきの映像、私ちゃんと気がついているんです」
「いや、あれは俺じゃないがな。全部合成だ。うん。しかしまあ、続きを聞こうじゃないか」
「あの映像の中で、ジルフリート様は本当は、他の女性のことを話していらっしゃったということに」
「――なぜ!?」


< 9 / 17 >

この作品をシェア

pagetop