好きだけど逃げ出したから……
「瑠美ちゃん、お疲れ!」
寮まであと少しというところで、後ろから声を掛けられた。
職場の先輩、西垣さん。
28歳の私より確か3歳年上で、面倒見のいい、職場のお兄さん的存在。
私が学生時代にバイトに来てた時には、1番下っ端で、洗い物ばかりさせられてたのに、今では立派な中堅の料理人。
私より先に仕事場を出たはずなのに……と思ったら、手にコンビニの袋をぶら下げている。
「買い物ですか?」
私が尋ねると、ニッと口角を上げて笑う。
「そ。ビールをね。つまみもあるから、一緒にどう?」
西垣さんは、手にした袋を掲げて見せる。
「私、お酒は……」
ビール1杯ですぐに赤くなって、眠っちゃう。
「って言うと思った。じゃあ、こっち」
そう言うと、西垣さんは、袋の中からプリンを取り出した。
「明日食べようと思ってたけど、特別に瑠美ちゃんにあげるよ」
「えっ、でも……」
それは申し訳ない。
「いいから、いいから。明日、食べたかったらまた買いに行くから」
西垣さんは、そう言って、私にプリンを押し付ける。
「俺の部屋で一緒に食べる?」
西垣さんは少し屈んで、私の顔を覗き込むようにして尋ねる。
え、それは……
西垣さんはいい人だし、信用してるけど、でも、なんとなくやっぱり男性の部屋に行くのは抵抗がある。
返事をできないでいる私の顔を見て、西垣さんは、またニッと口角を上げて笑った。
「うんうん、それでいい。女の子が簡単に男を信用しちゃダメだ。他の誰に誘われてもちゃんと断るんだぞ」
そう言うと、私の手にプリンを乗せ、私の頭をくしゃりと撫でた。
ここは、寮と言っても、アパートを1棟借り上げただけのもの。
1階が男子寮で2階が女子寮になっている。
「プリン、いただきます。ありがとうございます」
私は、ぺこりと頭を下げると、西垣さんに見送られながら、階段を上る。
私だって馬鹿じゃない。
西垣さんのそこはかとない好意は、なんとなく感じている。
でも、それには応えられないから、気づいてないふりをすることしか出来ない。
だって、私は、まだ倫也を忘れられずにいるんだから。
私が自分で一方的に終わらせたくせに……
寮まであと少しというところで、後ろから声を掛けられた。
職場の先輩、西垣さん。
28歳の私より確か3歳年上で、面倒見のいい、職場のお兄さん的存在。
私が学生時代にバイトに来てた時には、1番下っ端で、洗い物ばかりさせられてたのに、今では立派な中堅の料理人。
私より先に仕事場を出たはずなのに……と思ったら、手にコンビニの袋をぶら下げている。
「買い物ですか?」
私が尋ねると、ニッと口角を上げて笑う。
「そ。ビールをね。つまみもあるから、一緒にどう?」
西垣さんは、手にした袋を掲げて見せる。
「私、お酒は……」
ビール1杯ですぐに赤くなって、眠っちゃう。
「って言うと思った。じゃあ、こっち」
そう言うと、西垣さんは、袋の中からプリンを取り出した。
「明日食べようと思ってたけど、特別に瑠美ちゃんにあげるよ」
「えっ、でも……」
それは申し訳ない。
「いいから、いいから。明日、食べたかったらまた買いに行くから」
西垣さんは、そう言って、私にプリンを押し付ける。
「俺の部屋で一緒に食べる?」
西垣さんは少し屈んで、私の顔を覗き込むようにして尋ねる。
え、それは……
西垣さんはいい人だし、信用してるけど、でも、なんとなくやっぱり男性の部屋に行くのは抵抗がある。
返事をできないでいる私の顔を見て、西垣さんは、またニッと口角を上げて笑った。
「うんうん、それでいい。女の子が簡単に男を信用しちゃダメだ。他の誰に誘われてもちゃんと断るんだぞ」
そう言うと、私の手にプリンを乗せ、私の頭をくしゃりと撫でた。
ここは、寮と言っても、アパートを1棟借り上げただけのもの。
1階が男子寮で2階が女子寮になっている。
「プリン、いただきます。ありがとうございます」
私は、ぺこりと頭を下げると、西垣さんに見送られながら、階段を上る。
私だって馬鹿じゃない。
西垣さんのそこはかとない好意は、なんとなく感じている。
でも、それには応えられないから、気づいてないふりをすることしか出来ない。
だって、私は、まだ倫也を忘れられずにいるんだから。
私が自分で一方的に終わらせたくせに……