春になっても溶けないで
初雪
雪が降り始めた。
白くてふわふわした雪は、ゆっくりと空を舞って下へと降りてくる。
地面に着くと、雪はゆっくりと溶けていった。
あんな風に消えてしまえたら、どれだけ楽だろう。
屋上へ向かう外階段を上りながら、私はぼんやりとそんなことを思った。
外階段はとても錆びていて、私が踏むたびにギシギシと音を立てる。
このまま階段が外れて、ただの事故で死ねたらいいのに。
そしたら、私がクラスのイジメに負けたことを知らせないで済むのにと、私は唇を噛みながら思った。
少し強くなった雪が、私の制服を濡らしていく。
外階段にいると、強い風がたくさん吹いてきた。
まるで、私のことを外階段から落とそうとするみたいに。
風が吹くたび、本当に外階段から落とされるんじゃないだろうかという恐怖が心の中を支配していった。
こんなところで落ちたら、ただの怪我になる。そうしたら、死ねないじゃないか。もっと上に行かないと。
やっとの思いで私は屋上のドアの前まで着くことができた。
けれど、屋上のドアは、錆びていてなかなか開かない。
全体重をかけて、必死で押した。ここで引き返したくない。
でも、どんなに力を入れてもドアは開かなかった。よく見ると鍵がかかっている。
なんで。なんで先生たちは、クラスのイジメを止めずに自殺だけ止めようとするのだろう。
引き返すしか、ないのだろうか。
その時だった。
「何してんの?」
低い、透き通った声が後ろから聞こえた。
後ろを振り向くと、そこには男の子が立っていた。ネクタイの色が赤だから、私と同じ高校2年生。でも、知らない子だ。
「死ににきたの?奇遇だね。ねぇ、俺と一緒に死ぬ場所を探さない?」
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