春になっても溶けないで
悠が、目を細めた。

口角を上げ、眉を下げる。

ーーあれ?

さっきまでの笑い方と、少し違う。

さっきまでは、もっとハッキリしていたっていうか。

なんだか、さっきより儚げで、困ってるみたいな笑い方。

本当に、本当に少しの差だ。でも私は、悠のそんな笑顔が見れたことがとても嬉しかった。


「そっちも、やっと笑ったね。」


「え?」

悠が、切れ長の目を見開いて言った。


驚いているみたいだ。口も少し開けている。顔立ちが良いから、こんな表情でも絵になる。

そう思っていたら、またさっきと同じ、儚くて困ったような笑い方をして言った。



「ありがとう。」


「え?」

何が『ありがとう』なんだろう。

よく分からなかったけれど、私は悠にニコッと微笑んで見せた。

悠も、ニコリと返してくれる。


今のは、作り笑いじゃなかった。悠といたら心から笑える。



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