春になっても溶けないで
私のことを見てくれている人がいるんだ。

心の奥が温かくなって、ポカポカとしていた。


「じゃあ、またね〜?」

保健の先生はそう話を切り上げて、保健室へ入っていった。


私と悠は、廊下を歩き始めた。

手を繋いでいるということを思い出して、とても緊張し始めた。

悠の手は、とても柔らかい。けれど、大きい。


それが、悠が男の子であることを思い出させてくる。

とても照れ臭かった。


「図書室って、どっちだっけ。」

私がドキドキしていると、隣からポツリと声が聞こえた。

悠が、私の顔を覗き込んでくる。


「えっと…南館の5階…」

照れながらも、私はそう答えた。

「ありがとう。」

悠はとても嬉しそうに微笑んで、そう言った。

すると、私の手を引いてずんずんを歩いていく。

なんだかその手は、とても頼りに思えた。

どんなことがあっても、この手を掴んでいれば、乗り越えられる。

そういえば今日の朝も、そんな感覚に陥った。

悠の手は、不思議な力があるのかもしれない。


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