春になっても溶けないで
ドキドキしながら、ぎゅっと手を握る。

放課後の廊下はとても静かだった。もう、みんなは部活に行っている頃だ。

私も一応テニス部だけれど、随分前から行けていない。

中本さんも、テニス部なのだ。怖くて、とてもじゃないけど行けそうになかった。


そういえば悠は、部活に行かなくていいのだろうか?


「ねぇ、悠は部活に行かなくていいの?」


「いいんじゃない?」


悠が、私の顔を見ながらそう言った。


「凛といる方が、楽しいし。」


悠が、私に近づいてそう言った。


顔が熱くなる。それを見せるのが恥ずかしくて、下を向いた。


凛といる方が、楽しい。その言葉を口で反芻する。


自然と頬が上がった。
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