春になっても溶けないで
『好きだから』その言葉に、とても照れ臭くなってしまう。
きっと今私の顔は、トマトみたいに真っ赤になっていることだろう。

「なんで''好きだから''なんて言えちゃうの?昨日初めて話したのに…」

少し怒るように言った。照れ隠しの意味も込めて。

「初めて、ねぇ…」

悠が、含みのある言い方で答えた。
初めて、じゃないか。

それより前に、話したことなんて…


「このままじゃ遅刻しちゃうよ。」


悠が、時計を見ながら言った。
私もつられて時計を見ると、急がないと遅刻してしまうような時間だ。

「ほ、本当だ!早くしないと!」

制服に着替えようとして、手を止めた。
このまま着替えたら、悠に裸を見られることになるじゃないか。


「悠…戻ってくれない…?」

悠は、バレたかとでも言いたげな表情をした。

「分かったよ。そのかわり、今日は一緒に学校行かせてね。」


そう言うと、悠は窓を乗り越えて自分の部屋へ戻っていった。
さっきまで少し治っていた腹痛が、また痛みだした。

でも、一緒に学校に行けるのなら。

悠と一緒なら、中本さんなんて怖くないと、イジメなんて怖くないと思えた。

そう思うと、腹痛なんてどこかへ飛んでいく。

私は、清々して気持ちで制服に腕を通した。
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